TOMIYUKI KANEKO
金子富之
―台湾・道教信仰と気―

2019年Taipei Dang dai art fair(台北南港展覧館)に出品させて頂いた時、龍山寺(ロンシャンスウー)にお参りする機会に恵まれました。台湾は道教信仰が盛んで過剰と思われるほどの装飾が華やかです。油気を含んだ様な靄が漂い物々しい伽藍が佇んでいます。建物の古さが懐かしく、いつか来た様な夢だった様な趣きです。龍山寺は台北最古のお寺です。

道教とは中国太古の神秘思想を帯びた民間信仰であり神や神仙を信仰しその陰陽八卦の思想は占術、風水、気功など様々なものに影響を及ぼしています。内部には様々神仏がお祀りされ道教の大らかな吸収力と発散力を感じます。

本殿には観世音菩薩、普賢菩薩、文殊菩薩をはじめ、後殿には月下老人(縁結びの神)。媽祖(航海の女神)。水仙尊王(航海の神)。註生娘娘(安産の神)。文昌帝君(受験の守り神、学問、文章の神)。華陀(道教を代表的な医神、導引法と言う気功の 一種により100歳まで生きたとされる仙人)などの神々がお祀りされております。

線香の煙が漂う奥に本殿があります。四合院宮殿式の造りで回廊となっております。

関聖帝君(かんせいていくん)武と商売繁盛の神。三国志の関羽(かんう)が神格化されたもの。関聖帝君の廟はアジア各地にみられます。初期は怨霊として恐れられたが次第に神将、財神となり信仰されています。五行思想で火の特性を持つため赤ら顔で表現される事が多いと言います。
註生娘娘(ちゅうせいにゃんにゃん)子授け安産の神。註生とは生むか産まれないかを決定する意。全ての人々生まれるとき通過するという混元金斗という器を司るとされます。


弓矢を持っている門神の神荼(しんじょ)、鬱塁(うつりつ)と奥は天官(てんかん)の絵画。悪霊の侵入を防ぎ、鎧を纏った姿や恐ろし気な天官としてえがかれます。
この二神は鬼門で鬼を見張り、鬼が侵入しようとすると葦の縄で縛り、虎に食べさせていたと言います。

虎の神も福を呼ぶと考えられているようです。名刺が供えてありますが、神様に誰がお参りに来たのか、どんなお願いをしたのかを解って頂くものとの事です。聖も俗も混在する精神性が造り上げる造形物はどこか人間臭く、俗を肯定する様な聖の強い説得力があります。

様々な感情の飛び交う夜市(イエシー)活気があります。それぞれの人々が自分の心の境界を持って行動し、バウンダリー(境界)がしっかりしているその境界の構築の仕方に何か大事なポイントがある様に思えます。
