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​牛頭天王と画力

 埼玉県入間市の金子神社にお参りさせて頂いた時、須佐之男命がお祀りされておりましたが、かつては牛頭天王だったそうです。疫神であり荒々しい性質の牛頭天王を描かせて頂くと決め、制作に取り掛かりました。人は自分に近いものの方が力が出ると思います。その力が本当に出たかどうかは判断が難しいですが、ここに記録しておく事にします。

​金子神社。

 絵を描く力、画力は画家にとって生命線に通じる問題なのではないでしょうか。制作を始めた若い頃は気力は永遠に出る様に感じておりましたが、歳を重ねると生命力が弱まるのと比例して画力も弱まるものだと感じます。若い時に体の中にあるダイナニズムの様なパワーが歳をとるにつれ少しずつ無くなって来てそれが絵の表現に影響するのだと思います。

 そのパワーの正体は単純に言ってしまえば〝若さ〟だと思いますが画家としての若々しさを維持することが大きなポイントだと思います。何か大きな目標に向かっていく推進力、希望の力。これらを中年になっても造り、歳だから、人生はそう言うものだからなどと諦めない信念の力なのだと思います。何かの目標をリアルに思い描き、実際に紙に書いたりして具体的にし、未来の良いイメージを具現化して今の自分とイメージを地続きにする橋を架ける想像力が必要となって行く様です。

                      石崎神社。

江戸中期、疫病の平癒を願い京都の牛頭天王を勧進して建てたと言われます。

 石崎神社は胡瓜をお供えすることから、河童神社とも言われています。地元の方々からは〝オデンノ様〟と言われて親しまれているそうです。牛頭天王は須佐之男命と習合し様々な場所で信仰されている様です。

平清水の六番礼所。

念、思い、の様なものを重ねていくのもやがて大きな行動力に繋がる心の準備の様です。

 大きい絵画を描き続けていると絵を描く力、画力(※)の無さ集中力の欠乏が目立って来ました。慢性的なエネルギー不足になっています。絵を描く力の根本は何でしょうか、絵を描く者の当事者として画力の研究が始まりました。心身が元気だからと言って沢山絵を描ける訳では無い様です。絵を描いてない時間、その日常からが大事だと思い、掃除、皿洗い、子供との触れ合い、体を動かす事、色々試しましたが、総体的にある程度は良いと思いましたが、これぞと言う決め手が無い印象でした。

(※)  ここで言う画力とは、制作で絵を描く力の事。

力の象徴である力士達。(大相撲九州場所)

地に足を付けしっかりとグランディングしている事も大事なポイントの様です。

 絵を描く力。それをどの様に造っていくか。極論、制作する活力、絵を描く力が無尽蔵に湧けば、かなりの問題が解決されます。しかし、この問題は難題です。明確な答えが出ません。良い問いは良い答えを導く様です。ジャーナリングと言う書く瞑想とも言われる手法で問いとアファーメーション(宣言)を沢山書き出していく事にしました。問う力で答えを導き、アファーメーションで目標を達成しやすくする、その思考実験を試みました。また、日常、色々なものを見たり聞いたり、体験することが画力と何らかの関係があり、その刺激の意味はその時により変わって来る様です。

 強い画力をどう出すかと言う難題を心身に受けて、脳だけでは解決出来ず、心身を使ってどうにもならないその問題、状態を晒し、もがき、表現、反応している行為にも感じて来ます。普段取材で映した写真画像と共にその難題に、ジャーナリングによる問いかけやアファーメーションで抗ってみようと思います。

竜寿院、大日如来石仏と夥しい草履や下駄。

(アファーメーションは自分への宣言の意味もあるので、〇〇と知っています。と言い切った表現に敢えてしています。)

  • 画力とはどうすれば養生できますか?

  • 画力、活力を高濃度に圧縮するにはどうしますか?

  • 目標はノートなどに書くと達成しやすくなると知っています。

  • 制作する内発的動機をどう造って行くか?

  • 風土を感じさせるフィールドの広がりが作品にあるか?

  • 大型作品を制作する体力、気力をどう維持していくか?

  • 画力とは何で構成されているか良く考えると知っています。

  • 子供と言う存在の意味、力があると知っています。

安久津八幡神社の鯉のぼり。

  • 流れに逆らわず頑張らない力があります。

  • 描く事、書く事で小さな力を大きくする力があると知っています。

  • 逃げようにも逃げられない時、宿命に従うしかありません。

  • 今、居る所からいつも始まると知っています。

  • とりあえず10年やって下さい。

  • この世は肉体を持ってしか学べない世界だと知っています。

  • やりたくない事を断るのも自立と知っています。

  • まず描ける所から描いて下さい。その集積です。

  • 今日やれる事を具体的に書き出して下さい。

  • 希望とは未来の可能性を増やしていく事だと知っています。

  • 何回も思いながら、行動に移さない事で思いが増幅されると知っています。

  • 何か解らない瞬間に感応が引き起こされると知っています。

  • 何も考えないで行動出来たら一番良いと知っています。

  • 予想外の事を先にする事で肉体が先を取れると知っています。

  • 人間は人間の気に一番反応しやすいと知っています。

  • 自分も人間です。甘く見てはいけません。

  • 主役より脇役の方が好きな自分がいると知っています。

  • どうにもならない苦しみも工夫でどうにかなるかも知れません。

  • 日本画なのにペンを多用するのはパワーを優先させたいからと知っています。

1992年、岩手県久慈市山形町の畑で見つかった奇妙な足跡。

その足跡の主は〝ガタゴン〟と名付けられました。

亀岡文殊、御賓頭盧様。体の悪い所を撫でると良いとされます。

  • 制作の疲れは制作で取るのが理想と知っています。

  • 一から出来る様に勉強して下さい。

  • 画家の行きつく所、その最終の形はどう言うものですか?

  • イメージが浮かんだらもったいないのでドローイングで全部出すと知っています。

  • 手放す事で手に入るものもあると知っています。

  • 諦めるのでなく明らめるのだと知っています。

  • 残りの寿命を考える事で〝生〟が生きて来ます。

  • 自分を他者としてみた時、この人間がどこまで描けるか見てみたい気がします。

  • 一日中祝詞をあげる修行があるなら一日中何かを描く修行もあって良いと知っています。

  • 情報(霊的な情報も含めて)が生命の本質であると知っています。

  • 仙骨を立てる、仙骨を温めると良いと知っています。

  • アジアと言う可能性があると知っています。

  • 脳の報酬としての絵を描くと知っています。

  • 制作に費やしたエネルギーはいずれ自分に帰って来ると知っています。

三吉山の〝岩海〟

  • 制作の手間暇を惜しまないと知っています。

  • 等身大の自分で良いと知っています。

  • 失ったものと得たもの、全て平等と知っています。

  • 脳(自分)と環境(人間関係、生活環境)で反応が起きて作品が出来るのだと知っています。

  • やる気ゼロの状態から制作できる呼吸の様なものがあると知っています。

  • 今、この瞬間の妙があると知っています。

  • アトリエを掃除すると知っています。

  • 玉川温泉で体力気力を回復させると知っています。

 飛不動尊。ある美術関係者をお連れしたところ、鈴の音が数度聞こえたと言います。私には何も聞こえませんでしたが、奉納された巨大な剣が異彩を放ちます。

  • 健康家族になると知っています。

  • どうにもならない事は宇宙におまかせにすると知っています。

  • 絵皿の絵具の汚れを綺麗に落としてみると知っています。

  • 自分の思った事、とった行動がそのまま自分に帰って来ると知っています。

  • 長生きするのも制作活動の一環だと知っています。

  • その作家の全部が絵に出てしまうと知っています。

  • 運命は全部決まっていても、自分の意志で変える事が出来て、でもそれも決まっていて、の先の取り合いの意識と知っています。

牛頭天王ドローイング(小下絵)

 コロナで揺れるこの時代に疫神である牛頭天王を描かせて頂くのは、意識した訳ではありませんが、知らない間に時代の影響を受けたかも知れません。また必然だった気もします。

 強い意志を持って臨んだつもりでしたが、次第に恒常性(ホメオスタシス)が働き、通常の精神に戻って行くのを感じます。人間の心身は無理をして体を壊さない様にそう出来ている様です。その通常に戻ってしまった心身をまた上に押し上げる為に〝禊〟があるのだと思います。

 正統派の日本画家の方は小下絵、大下絵、本画と手順を踏みますが、私はパワーや感覚が逃げてしまう様な気がして、小下絵からすぐ本画に移ります。

牛頭天王、制作風景。

 問い〟と〝アファーメーション〟だけでは画力を高める方法に切り込むのはやはり難しいと思いました。しかし、書く、記すと言う行為はとても小さな行為かも知れませんが、今日思い付いた事は未来の自分には大きな意味のある言葉かも知れません。それは、時間が経つにつれ大きな差が生まれるものだったら、とても貴重だと思います。

 実践と言う心身を動かし体験する行為がないと解らず、やはり画力とは薄皮を一枚一枚積み重ねて高めていく行為なのだと思います。その緩やかで遅い成長、遅い理解を我慢出来る気の長さ、忍耐が必要なのだと思います。それには楽しんで制作活動を行う心がけが必要なのだと思います。楽しくないと長続きしないのでその為の自分に合ったロジックを造る事が迫られます。

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