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―カンボジア海外研修―

 2015~2016年、文化庁の海外研修員制度でカンボジアのシェムリアップで学ぶ機会に恵まれました。カンボジアは民間信仰(アニミズム)、ヒンドゥー教、上座部仏教、道教などが混ざり合いクメール人の90%は上座部仏教ですが複合的な信仰の形を取っています。海外研修員としてご縁を頂いたこの地で自分の能力を開花できればと出発しました。アンコール・ワットやアンコール・トムだけでなく様々な場所をスケッチとドローイングで記録し新しい表現を模索し続けました。フィールドワークの目的の一つは可能性を見出す事なのだと思います。

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  最初は体力、気力とも充実しこの時間がもっと長く続けばと思っていたのですが、後にカンボジアの過酷さを経験することになります。カンボジアは気温がとても暑く日陰でスケッチをしていても二リットルのペットボトルの水が汗で全部出てしまいます。そして、アミーバ赤痢や熱中症なども経験する事になります。

  興味を持っている不可視の世界を探求、表現しようと精霊、神獣、神仏を中心に取材が始まりました。トゥクトゥク(三輪バイクタクシー)で走る疾走感が旅の高揚感を高めます。

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  アジアのオーパーツ(out-of-place artifacts)=場所違いの工芸品と呼ばれる、ステゴザウルスを想起させるアンコール遺跡群(タ・プローム)にあるレリーフです。恐竜を見て彫ったのでしょうか。しかし建築された9~12世紀のアンコール王朝時代に恐竜は存在しません。ステゴサウルスは1億5千万年前の生物です。幻成(げんじょう)と言う言葉があります。何かから幻の様に立ち現れて形づくると言う意味ですが、カンボジアの精神風土が幻成させた興味深い造形物だと思います。人間の創造力はインスピレーションと結びついた時、何処かの時間軸に実在する何かを捉えてしまうのかも知れません。未知動物学(クリプトゾオロジー)の世界ではアフリカ・コンゴで〝ムビエル・ムビエル・ムビエル〟と言う隠棲動物の目撃がありステゴサウルス似ていると言う説があります。

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 ステゴサウルスのレリーフの他にも、謎の怪物達のレリーフが連なっています。恐らく作者がレリーフに描く神獣達のデザインのバリエーションを造る中で偶然ステゴザウルスの形になってしまったのだと思います。しかしメキシコ・アカンバロの恐竜土偶や南米ペルーのカブレラストーンの絵柄の様に人間は恐竜と共存していたかも知れない可能性のものも出土しているのでまだ夢は潰えません。

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 寺院の門番に見た事もない神獣がいます。名前もわからないのですが造形や色彩が独特で不思議な存在感を放っています。カンボジアは様々な神獣を融合させあって新しい神獣を造ってしまうのだと思います。

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 イメージを集積し再生産する事はアジアの神々の造形原理であり、この事を意識せずに自分も同じくイメージを再編成して絵画制作をしていました。神々の造形原理の法則に知らない間に組み込まれて無意識に行動していたと考えると、我々人間の心身は何か巨大な法則性を映した小さな影なのかも知れません。

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 シェムリアップは仏教寺院が点在していて、一般の人でも入れる寺院で何回か瞑想しました。何も考えないで座っているだけですが、心が落ち着き時間の経過が早く感じとても気持ちが良いものでした。しかし帰ろうとして外に出ようとしたら、靴がありません。宿泊先のアパートまで裸足で帰らないといけないのかと困っていたら、靴を持った子供達が現れ、「あなたの靴、守っていました、1ドル」と言います。もう少し低額の2000リエルを渡し靴を返してもらい無事帰れました。子供達も生きる為に工夫を凝らします。

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 アジアの代表的な蛇神ナーガ。古代インド発祥のナーガは仏陀が悟りを開く時、守護した神獣とされ仏教に取り入れられて仏法守護の神になりました。カンボジアから出土する仏陀の石像などの光背のほとんどがナーガになっております。中国に伝播した時は〝龍〟とみなされ龍神信仰と習合しました。水神の特性を秘め降雨などの天候を左右し八大龍王と呼ばれるようになります。カンボジアの寺院などで橋や歩道の欄干がナーガの造形になっている事も多く、親しまれていてその源流はインドコブラの神格化と思われます。

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 蛇神伝説は神話だけとはかぎりません。トンレサップ湖には本当の大蛇が潜んでいます。トンレサップ湖は東南アジア最大の湖で、その主と言えば100㎏を超えるメコンオオナマズと6mに達すると言うアミメニシキヘビが双璧です。この写真のものはまだ小型ですが、大蛇が人を呑むから注意するようにと言う看板が立っている場所があるそうです。

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 ここでは水上生活を送る人が多くいて学校などもあります。約600種の淡水魚が生息し漁業が盛んでカンボジア人のたんぱく質の60%を補っているとされます。乳海攪拌神話の水棲動物たちがかき混ぜられペースト状になってミルクの様になったと言う魚影の濃いその豊穣さを感じさせます。

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 アンコールワット、南大門のアスラ(阿修羅)。アスラ神族は当初は厳格な司法を司る神々でしたが信仰が薄れ神々と敵対する魔族とされていきました。様々な表情のアスラが連立しており強力な存在感を放っています。古代インドの発祥の神ですが、仏教に取り入れられ日本に伝わった時には八部衆の護法善神となりました。

 ヒンドゥー教の神々の方は三大神がブラフマー神、ヴィシュヌ神、シヴァ神とされこの三者は三神一体(トリムルティ)と考えられ、それぞれ宇宙の創造、維持、破壊を司るとされます。

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 アスラはその容姿は猿の様なものであったり、複数の眼、無数の腕を持っていたり多頭であったりなど様々です。南大門のアスラは一体づつ異なった顔で、その特性を現わしている様にも見えます。ヒンドゥー教は仏教やバラモン教の神を取り込み膨大な数の神々がいると言われますが、その奥行きと懐の深さが実際のフィールドの現実と繋がっていて臨場感を高めます。フィールドの広がりを感じるその瞬間は芸術にとって創造性の高まりの導入部分なのかも知れません。

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 寺院の入り口の門番として日本の神社の狛犬的な役割をしているのがシンハ(獅子)です。様々なデザインがあり、門衛神という存在です。

 ヴィシュヌ神の化身の一つにナラシンハと言う獅子の頭に体が人間の姿をした化身がいます。同じくヴィシュヌ神の猪の化身ヴァラーハに退治された魔神がいて兄弟がいました。兄弟は仇を打つ為、打倒ヴィシュヌ神の思いで苦行を重ねました。そしてブラフマー神はその兄弟に獣にも人間にも倒せない不死身の肉体を与えました。しかしその兄弟の息子はヴィシュヌ神を信仰しており、激怒した兄弟が息子を殺そうとした時、ナラシンハが現れ、兄弟を食い殺しました。ナラシンハの獅子の頭を持つ人間の姿をした特性により、獣でも人間でもないその力に魔神の兄弟の不死身の肉体は通用しなかった様です。このエピソードは人間にプラスされた獅子(シンハ)の強さを強調している様にも見えます。

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 現代的な造形ですが獅子でなく虎の門番もおりインパクトのある表情です。口の中には生肉がお供えされています。カンボジアはシンハ(獅子)のイメージは虎と比べると圧倒的に多く、やはり鬣がある百獣の王の方が風格があると言う事なのだと思います。タ・プローム遺跡のジャン・デスピジョル(1886~1965)による写生には虎が描かれている事からシェムリアップにもかつてインドシナ虎が沢山生息していた事が伺われます。ここではシンハの代わりに門番も出来る虎はその力を認められている様です。

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 ニューリーフブックカフェと言う所でドローイングしていると虎が描けました。虎の門番は虎を描く為のトリガーになってくれたのかも知れません。今まで描いてきた日本画的要素に汎アジア的要素を組み込み新しい表現を試みるのも目的の一つだったのでカンボジアのインパクトのある虎の像は非常に興味深いものでした。

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 神象の造形も迫力の質感です。像は神々や王の騎獣であり、実際に戦にも参加し戦力として重宝されました。日本で帝釈天の名で知られる雷帝インドラは元々はインドのデーヴァ神族の英雄神です。その騎獣が白い象のアイラ―バァタと言われ雲を造り出す能力があるとされます。〝雲を編むもの〟の異名を持ち雨や水と関わりの深い霊獣とされます。

 また魔王の騎獣と言う側面も持っています。魔王ラーマの騎獣ギリメカラは巨体を誇りますが仏陀の悟りの深さに感嘆し逃げ帰ったとあります。アンコール・トムでは実際にアジア象に乗る体験もできます。 

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  この神の造形は恐らくガルーダだと思います。ガルーダは龍を食べると言われ全身は黄金に輝き翼は赤く、ヴィシュヌ神の騎獣でもあります。ガルーダは日本に伝わり迦楼羅(かるら)と言う天竜八部衆の一人に加わり、後に烏天狗の元型になったと言います。人間の想像力は共通性があるのだと思います。日本に渡って来て変容しなくても烏天狗に近いイメージになっています。妖怪千体説を思い起こさせます。

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  女の砦を意味するバンテアイスレイ遺跡に世界の再生と破壊、生殖を司るシヴァ神が描かれています。動きのあるポーズを取っていますが〝舞踏の王〟としても知られ、シヴァの舞踏の背景に存在する根本的な観念は〝根源的でリズミカルなエネルギー〟だと言われています。彼の宇宙的規模の舞踏は自己の中でエネルギーを具現化しその永遠のエネルギーは様々なものを動かす勢力となり世界中のあらゆる展開、維持、消滅の力になり全ての生命、自然現象は彼の永遠の舞踏の結実であるとされます。シヴァ神は日本に伝わった時に大自在天、摩醯首羅王となりましたがヒンドゥー教としてのシヴァの偉大さは消え仏法守護の神としての位置づけになりました。

 

 特徴的な舞踏のポーズは分裂する腕が動きを表現しその躍動感は現代的な平面表現と重なる所があると思います。 

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  蛇体の8の字のエネルギー循環を繋ぎ合わせ自らを食べる蜘蛛とその中心で舞踏のエネルギーを漲らせるシヴァ神のドローイングイメージ。両腕も、芽が出て葉が茂り花が咲き実がなり、その実が地に落ちる生死循環のそれぞれの手の型

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  インド神話における魔王ラーヴァラとシヴァ神のエピソードもバンテアイスレイに描かれています。ラーヴァラはシヴァとその妃のパールバティの住むカイラス山を揺らします。怒ったシヴァはラーヴァラを山の下に封じ込まれてしまいます。しかし千年シヴァへの賛歌を詠った結果、彼はシヴァに許され帰依したと言われます。

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 アンコールワットの魔王ラーヴァナのレリーフです。神々と敵対する彼の強さは苦行と知識に裏打ちされていると言います。仙人プラスティアの血を引き十の頭、二十の腕、銅の眼、月の様に輝く歯、そして巨体を持ちます。ブラフマー神に神仏にも負けないと認められます。息子のメーガナーダも雷帝インドラを倒しインドラジットと呼ばれます。しかしラーヴァナはビシュヌ神の化身であるラマチャンドラに敗れます。

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  シェムリアップの寺院の壁に描かれた地獄の様子です。釜茹でにされている人が描かれています。悪い事をすると死後こんな世界に行ってしまいますよ、と言う〝悪事抑止力〟の効果で描かれました。座って斧を持っている人物はヤマラージャ(閻魔大王)だと思います。神々は同一のものであっても様々なイメージがあるので創造性が豊かな事は興味深い要素だと思います。ヤマラージャは最初の人間で最初に死んだ人間です。死後の世界は最初は楽園でしたが時代が進むにつれて楽園は地下世界に移行し、死者の生前の罪を裁くイメージが強くなって行きました。

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  小さなお堂の中にはヒンドゥー教、仏教、中国の仙人の様な像が一緒に分け隔てなく並べられています。宗派の垣根のない多神教の様な信仰で、八百万の神と仏教を同時に信仰する日本に似ている感じがします。

 トゥクトゥクのドライバーさんが「あのお寺の森の上には変なものが飛び跳ねているから気をつけろ」とか「あそこは火の玉が出るから危険だ」などと言う事を普通に話すので日本よりも妖怪や精霊、幽霊について信じている人が多いようです。一番恐れられているのがアープと言う魔物で首が抜けて内蔵をぶら下げて夜、飛ぶと言います。人により見えたり見えなかったりする様ですが、その内臓が緑色に光る時があるそうです。

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  雨季のモンスーンが強風で土煙を巻き上げながら雨を降らします。海外で生活している実感を強めます。新しいイメージを見たくなりあまり有名でない寺院などに行くと名前の解らない神様もいらっしゃいます。全身真っ黒でヤマラージャ(閻魔大王)でしょうか。棍棒を持っていたり、王族の様な衣装で唇が黒であったりなど不思議な姿をしています。魅力的なものを見付けたらどう作品に生かしたら良いのでしょうか。その実物の横に自分の作品を並べた時、魅力や迫力が負けてないかと言う事なのだと思います。対象物をリサーチする事により作品の背景を深める事も大事な要素だと思います。その奥行きが現実の空間と結びついた時、リアリティになるのです。

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 良く飲み物を買いに行った雑貨店です。ネイティブなマーケットに行くと、雷魚や蛙や怪しいものも売っています。蛙は特徴のあまり無い味でしたが、蛙に憑かれると耳の中で甘酒を醸されると言います。乾いていて何もいなかった側溝の水路では、水が入ると小さな魚がはやけたらしくキラキラ光っています。夜になると〝トッケー〟と鳴く蜥蜴か家守の様な生物がおり、七回連続で鳴くのを聴いた者は幸福になると言います。

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  クメール・ルージュが虐殺を行ったキリング・フールドには今も大量の人骨が残っています。骸骨達をドローイングしていると色々想像してしまい密度の濃い描写になりました。

  ポル・ポト派が刑務所として使い拷問も行われたプノンペンのトゥールスレン博物館にも行ったのですが、生々しく、建物自体が発する重苦しい圧力で長時間居たくない気持ちになりました。人間はタガが外れてしまうとどこまでも残酷になってしまう様です。

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​知らない間に危機が忍び寄っていました。彼は私の後を付け、追いついて来て顔を覗き込んできます。

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  パゴタ(お墓)です。強い日差しに照らされてコントラストがはっきりして風景は綺麗に見えますが、綺麗でもこの暑さは人間には良くない様です。体がだるく熱中症にかかった様です。暑いとクーラーを付けてしまうのですが、あまり頻繁に点けた為かクーラーの効きが悪くなってしまい、しかし暑いのでアパートのベランダに出て夜、涼みながらドローイングをしていました。すると衣服から出ている手足などがチクチクします。でも、あまり痛くはないのでほおっておきました。部屋に入り明るい所で見てみると、虫刺されだらけでした。小さいブユがいっぱいいた様で、カンボジアでのスケッチは虫よけスプレーが必携です。

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   疲れて体力が落ちているところでアミーバ赤痢にかかってしまいました。一回目は日本から持って行った薬でなんとか治まりましたが、二回目は胃に穴の開いた様な痛さでどうにもならず現地の病院で入院しました。40℃以上の熱と嘔吐と下痢で、嘔吐を繰り返すと汗が噴き出て熱が一瞬下がりますがまた上がってきます。日本では下水や飲み水がしっかりしているのは当たり前の様に感じていましたが、それは凄い事の様です。

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   南アジアで有名な主格病魔神(マハーコーラ・サンニーヤカー)。ヤカーはインド神話ではヤクシャとされ凶悪な悪鬼の意味を持ちます。日本でも仏教では夜叉と訳され鬼神の類とされます。東南アジアのカンボジアでもヤカーに対応する病魔神がいて障りがあったのでしょうか。ヤカーには仏陀の名を掲げて説得し去って頂いて病気を治すらしいですが、呪術医ではなく現代医学のお医者様に治して頂きました。  

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  病院に入院すると注射を打たれ、寒くなってきてガタガタと震えました。点滴を何本か打っていただいて腹痛も治まり数日後何とか退院できました。点滴のせいか解りませんが皮下脂肪が皮膚の中にお餅を入れた様なふにゃふにゃした感じになりました。以前、鳥黐幽霊(とりもちゆうれい)という稲生物怪録に出てくる鳥黐のように粘々した皮膚の妖怪を描きましたが、体がお餅の様になるこの発想は確かにあり得ると思いました。健康な時は気付けませんが体がどこも痛くなく今日元気で何かを出来る事はそれだけで、実は有難く凄い事なのだと思います。

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  お餅の皮膚も数日すると通常にもどりました。そして現地の大学の先生に講評して頂きました。カンボジアの神仏の絵画は顔や体の比率が厳密に決まっておりその視点から見ると貴方のドローイングは基本的ではないとのご指摘でしたが、伝統的な絵画としての形ではなく現代美術の要素も理解して頂き、色々な神々の仮面も見せて頂きました。

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 何を考えるともなく、絡まった蛇のイメージが出てきました。人間の深層にはやはり蛇の様なイメージが眠っているのではないでしょうか。

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​その蛇が八方へと広がり宇宙を構成します。

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 八方へ広がる宇宙を構成していく蛇を丹田に抱き、それに伴い折りたたまれた持物が二重螺旋と変化し胎内、子宮から混沌とした暗黒宇宙が生まれる。そこにやがて星々や神々なのどの光が発生し一元から陰陽二極、そして多元化していくその宇宙創造神であるブラフマー(大梵天王)のイメージ。

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  研修の最後に再度アンコールワットに行きました。朝日が水面に映りながら登っていきます。アンコールワットは天体に密接に繋がっているとされます。天体、宇宙も含めた巨大な立体曼荼羅であり舞台装置なのだと思います。アンコールワットをはじめとする遺跡群は縮小された宇宙なのだと思います。その中でシャーマンや僧達は儀式を行ったりインスピレーションを得ていたのだと思います。

 神々の具体的なイメージは沢山得られました。それを生かし制作する事は出来ると思います。しかし本当に表現したいものは一連の取材で感じていた巨大な空間や大気の脈動、存在感とダイナニズムではないかと思いました。何か巨大な宇宙的な存在、それを神としたら宇宙創造神のブラフマーではないかと思いイメージを思い描く様になりました。今回、遺跡のレリーフや神像からブラフマー神の明確なイメージを得るという事は少なかったと思いますが、ドローイングを繰り返すうち少しづつ形が思い付き始め、上記のイメージを得る事ができました。ブラフマー神の和名である〝大梵天王〟として制作させて頂きました。そして、宿泊施設を提供して頂いた方々に大変お世話になり日本に無事帰る事が出来ました。

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